ヘルニアになって1年たったころ、自分のいちばん深い思い込みに気づいた。
「横になる=寝る」。
当たり前に聞こえると思う。でも、これが1年間の行動を縛っていた。
健康だったころ、横になるのは夜寝るときと、疲れてベッドに倒れ込むときだけだった。横になる=活動の終了。その感覚が染みついたまま、ヘルニアで横にならざるを得なくなった。だから無意識に、こう思っていた。横になっている自分は、何もできない状態なのだと。
横になっていても、脳は動く。声は出せる。スマホは操作できる。——この当たり前に気づいて、仰向けのまま音声入力で何かを作るという発想にたどり着くまで、9ヶ月かかった。9ヶ月。この記事は、その遠回りの記録だ。
体は、ヘルニアの前から壊れていた
白状すると、ヘルニアは突然の事故ではなかった。猫背、ガニ股、歩き方がおかしい自覚。ジムに行くと腰が痛くなる。走るとフォームが崩れて膝と腰にくる。「運動したほうがいい」と言われて走っては、痛みが出てやめる。その繰り返しだった。
いまなら分かる。順番が間違っていた。体幹の筋肉、それから姿勢、それから有酸素運動——この順番でやるべきところを、いきなり三番目から始めていた。土台のないまま動けば、壊れる。壊れてから、それを知った。
「リハビリが仕事」になっていた
寝たきりになってからの13ヶ月、自分の仕事は治療法を調べることだった。患者のブログを読み、論文を探し、AIに毎日質問した。ヘルニアの治療情報なら誰にも負けないと言えるくらい溜まった。
でも、その13ヶ月のインプットは、そのままでは1円にもならなかった。
「調べた結果をまとめて出せば、同じ状況の人を助けるものになる」——頭では分かっていた。でも「まだ治療に集中すべきだ」「まだ情報が足りない」と言い訳して、先送りしていた。調べる時間は同じなのに、出すか出さないかで意味がまるごと変わる。それを認めるのに、1年かかった。
恐怖は、痛みからお金へ移っていく
同じ状況の人に伝えたいことがある。ヘルニア患者の怖いものは、時間とともに入れ替わっていく。
発症してすぐは、痛みが怖い。3ヶ月を過ぎると、長期化が怖くなる。このまま治らないんじゃないか。そして6ヶ月を過ぎたあたりから、恐怖の正体はお金に変わる。治療費は積み重なる。回復のためと思って買い続ける。収入はゼロ。蓄えは減り続ける。
お金の不安がメンタルを蝕んで、メンタルの悪化が回復を遅らせる。この悪循環のなかで気づいた——「今後お金が入ってくる見通し」があるだけで、治療への集中力まで変わるのだ。
だから、二股のどちらでも生きていける計画にした
ヘルニアが完治するかどうかは、誰にも分からない。医者にも、自分にも。
だから決めたのは、こういう計画だった。いまの状態——座れるのは2〜3時間、基本は仰向け——が一生このままだったとしても、経済的に立っていられる仕組みを作る。治療は生活の一部に戻す(1日40分)。残りの時間で、仕組みのほうを作る。
これは悲観ではなくて、たぶん一番安全な計画だ。完治すれば、仕組みがある分だけ加速できる。固定されても、仕組みがあるから生きていける。どちらに転んでも機能する——1年目の分岐点で出した、自分の答えがこれだった。
同じ場所にいる人へ、一手だけ
もし今、横になったままこの記事を読んでいるなら、一つだけ。
横になりながらできることを、今日1つ見つけてほしい。音声メモでも、電話でも、オーディオブックでもいい。横になっている時間の呼び方を、「何もできない時間」から「活動時間」に変えること——自分の場合、すべてはそこから始まった。
治るかどうかは、明確にわからない。でも、わからないまま進む方法は、ある。
——ところで、「固定されても生きていける計画」には、当然お金の計算が要る。自分が1年で何にいくら使ったかは、別の記事で全部数えている。
よくある質問(FAQ)
Q. ヘルニアで「横になる」ことと「寝る」ことはどう違うのですか?
A. 「横になる=寝る(活動の終了)」という思い込みが、療養1年目の行動をずっと縛っていました。実際には横になっていても脳は動き、声は出せ、スマホは操作できます。横になることは休息であると同時に「仰向けのまま生産活動をする姿勢」にもなり得る——この認識の転換が、座れない状態でも働き直す起点になりました。
Q. 1日のうちどのくらい横になって過ごしていましたか?
A. 発症から1年の時点で、座っていられるのは1日あたり2〜3時間ほどで、それ以外は基本的に仰向けで過ごしていました。ポイントは横になる時間の長さそのものではなく、その時間を「寝て過ごす」か「音声入力などで活動する」かで、療養の意味がまったく変わるという点です。
Q. 横になったままでも仕事や作業はできますか?
A. できます。私自身、仰向けのまま音声入力で文章を書く仕組みにたどり着くまで9ヶ月かかりました。音声メモ・電話・オーディオブックなど、横になったままできることは意外と多いです。「横になっている時間=活動できない時間」という前提を外すことが、第一歩になりました。
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